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白糠酪恵舎の今日までそして明日から Vol.1~イタリアにチーズを学ぶ〜 | 【白糠酪恵舎】豊かさ育むチーズ物語

井ノ口視点

白糠酪恵舎の今日までそして明日から Vol.1~イタリアにチーズを学ぶ〜

『酪農王国北海道で牛乳が飲めない』
 農業改良普及員として白糠に赴任して半年が過ぎたころ、大樹町でチーズ作りをしている人に出会った。その頃十勝では農家製のチーズ作りが流行り始めていた。どうもみんなでフランスに行ってすっかりその気になったらしい。彼の話はとても興味を引く内容だった。
 その半年後、僕らは彼を白糠に呼んで講演会を開いた。もちろんテーマは「農家製手作りチーズ」今は無い農協の2階の小さな会議室だった。その時のチーズの味は覚えてはいないが、「チーズを作ってみたい!」と思った。 講演会の後、白糠町4Hクラブのメンバーは既にチーズで御殿を立てる話で盛り上がった。もし一人でも冷静な人がいたら白糠酪恵舎は生まれなかっただろう。
 僕らが手作りチーズに感動したのには理由がある。それは北海道酪農の歴史にある。戦後の選択的規模拡大を推進した構造農政の中で日本に酪農を発展させようと草地を造成し、乳業メーカーを育成し、大規模な酪農を育成する政策が打ち出された。酪農という産業はそもそも都市型農業で消費地が近くにある必要がある。しかし設定された消費地は東京である。そのための仕組みを作り上げていた。結果として地元が取り残された。従って自分たちの牛乳すら自由販売できない。さらに当時は小規模な乳業メーカー(手作り工房も含めて)は過当競争を引き起こすという理由で規制されていた。だから僕らはチーズを作るなど思ってもみなかったのだ。「そんなことができるのか?」講演中に誰かが呟いていた。
その規制は4年後に緩和され、今は北海道に100くらいチーズ工房ができた。しかし、「乳製品の食文化がない」という事実は今でも北海道に横たわっている。地域で作られ、地域で加工され、地域で消費されるとその農畜産物の生産が上がることは地域経済にとって重要である。しかし地域と切り離されてしまうと牛乳がどれほど売れても地域の人には関係ない。これでは地域の人たちとの連携がとれない。

『イタリアにチーズを学ぶ』
 チーズ御殿を目指していよいよチーズ作りが始まる。僕は普及員だったのでみんなに教えなければならない。そう思って数年前になぜか買っていた「チーズ工房」という本を読み、モッツァレラを練習することにした。本には簡単に作れると書いてあった。確かに簡単に作れると書いてあった。しかし、目の前には固まることを知らない牛乳がもう2時間もバットの中にある。完全に失敗した。それは絶望の服を着た希望だった。
 僕らが作るチーズにモッツァレラがリストアップされたのは僕の負けず嫌いのせいである。そして大樹から教わったゴーダタイプの2種類を作り始めたのだ。
 それからというもの北海道は言うに及ばす、全国のチーズ工房を訪ね歩いた。そんな時、ある人は言った
「井ノ口君、日本に本当のモッツァレラはないよ。本物を食べたいならイタリアに行かなきゃ。」
「そうか!じゃ行かなければ!」

僕の師匠のメラーノ ジェルマーノさん
そしてイタリア行脚が始まった。はじめのイタリアはオリンピックみたいなもので「行ったことに意義がある」ものだった。要するに何もわからなかった。技術も知識もない人が海外に行っても何も得られないということを知った。それからは日本で練習して課題を作って課題の解決のためにイタリアへ行った。
 そんな最中に「イタメシブーム」が起きた。僕は不思議に思った。「イタメシはブームになるのになぜフレンチはブームにならないのか?」そしてもうひとつの不思議はゴーダとモッツァレラを酪農家の青年たちが持ち帰ると「母さんはモッツァレラの方がおいしいって」という事実。
「美味しいって?ゴーダの方がましだろう?」
その頃僕らのチーズは微妙だった。
 そしてイタリアの本を読みあさるうちに気付いた。イタリアと日本は良く似ている。気候風土も食べ物も、米もタコを野菜も良く食べる。醤油をオリーブオイルに置き換えれば一緒だ!この気づきが僕らを食材のチーズへと向かわせたのである。

チーズ職人

  • 白糠酪恵舎 代表 井ノ口 和良
             

    福岡出身。18歳で北海道に渡り帯広畜産大学を卒業後、道東へ移住。 酪農と関わり暮らして39年。夢は原材料100%の純国産チーズを作って広めること。

  • 及川 由博

    生まれも育ちも生粋の北海道人。25歳で井ノ口代表と出会い、チーズ作りの虜に。酪農の豊かさを共有しあえる仲間づくりに奮闘中。

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